芝居で出合った 演出家、俳優の 現場のイイ話。私の本箱、イメージを言葉にする とっておきの方法 。 エッセイ、イラスト、本のコレクションの紹介、その他 私のお気に入り あれこれ 

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そのほか

嵐子さん語録 6

   長岡での嵐子さん

引退して長岡にいらっしゃった藤沢嵐子さん。どうしていらっしゃるかと、たまたま新潟に仕事で行った時に、駅から電話をしてみました。
「あら、あなた近くに居るのぉ。それなら今からいらっしゃいよ」
「でも、遅いですから今回はお声だけで、また改めて…」
「そうォ?遅ければ泊まっていってもいいのよ。また訪ねていらっしゃいね」
ということで嵐子さんの言葉にあまえて、
次は仕事の帰りに、ご自宅におじゃましたのです。
女の方の部屋には珍しく、飾る物が何もなく実にさっぱりとしていて、これも嵐子さんらしいなと思いました。質素な部屋には、読みかけの本が並んでいます。
原書を手に取って
「最近は、南米の小説ばっかり読んでるの。独特の世界があって、あなた、面白いのよ。」
とはいっても、南米の文学といえばガルシア•マルケスの「百年の孤独」ぐらいしか思いつかない私でした。
「引退しちゃってからは、不思議なくらいタンゴは聴かなくなったわ。クラシックは聴いてるけど。」
やめるとなると、本当に潔いというか、キッパリと全てを手放してしまうのが嵐子さん流。
「昔の懐かしいところを訪ねたいとか、そういうことも思ったことがないの。きっと私って、そういう感覚なんかが欠如しているのよ。」
そして、友人に連れて行ってもらった蛍の乱舞する川に行ったことを、夢中になって話してくださいました。誰にも知られていないその場所は、それこそ信じられない程の蛍が飛び交っていて、思い出しても現実の景色とは思えないほどだったことなど。それがどこだったのか忘れてしまいましたが、私もその幻想的な風景の中に入り込んでしまい、すっかり話に引き込まれて聴いていました。
 嵐子さんの話は、その卓越した歌の表現力と同じように、人を魅了します。決して言葉は飾らないけれど、目を輝かせて語る話を聞いていると、その場に居るような気にさせられます。
 舞台ではあまり喋らない嵐子さんですが、好きなことの話になると、いつも堰を切ったように話が止まらなくなりました。
 
 東京を離れるとき、狸穴のマンションで
「何故、長岡にいらっしゃるのですか?ご親戚でもいらっしゃるのですか?」
と伺ったら
「たまたま長岡に行くことがあって、あ、ここなら住んでもいいな、と思ったのよ。」
とのこと。本当に、たったそれだけで、縁もゆかりもない土地に単身で暮らすと言う思い切りの良さは、一体どこから来るのでしょう。
もしかしたら、東京のマンションも、盛り場も、友人も、全てに過去の思い出がしみ込んでいて、それと決別して心機一転と思われたのでしょうか。
 とは言っても、機関銃のように次から次へと話をされる嵐子さんは、決してそれは私へのサービス精神だけではなくて、どこか寂しさもあったように感じました。

「あら、もう帰っちゃうの?またゆっくりいらっしゃい。
いいお店もあるんだから一緒に行きましょうよ」
その後、もういちどお訪ねして、近所のお寿司屋さんでごちそうになり…私が長岡で嵐子さんにお目にかかったのは、その後は一度だけでした。
 長岡にいらしてからは、あまり人に会いたがらなかったということを、あとになって聞きましたが、考えてみれば私は、タンゴの世界の人間というよりは、お客様との間の橋渡し役、そんな立場だったからこそ、気楽にお会いいただけたのかもしれません。
 
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プロフィール

はんがん

Author:はんがん
河崎早春(かわさき さはる)
俳優、朗読家。NPO日本朗読文化協会講師。

舞台の案内、これまでの舞台、仕事歴は
公式HP 「ことばの国」

朗読、語りの様子はYouTube
「ちりぢごく」「瘤取り」ほか


プライベートな 趣味の世界は Facebook

なお、武者小路実篤記念館のHPで
詩の朗読の映像も見られます。
→ 「詩の世界」

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