芝居で出合った 演出家、俳優の 現場のイイ話。私の本箱、イメージを言葉にする とっておきの方法 。 エッセイ、イラスト、本のコレクションの紹介、その他 私のお気に入り あれこれ 

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そのほか

嵐子さん語録 5

    歌詞のこと


初めて藤沢嵐子さんの司会をしたのは、嵐子さんかタンゴ界から10年ほど退いていらして、その後に活動を再開された頃でした。ですから、私は若い頃の嵐子さんを存じ上げていません。
昔は美しい高音だったと伺っていますが、初めて聴いた嵐子さんの歌は、伸びやかな中低音の深みのあるお声でした。若い頃の歌声を録音したものを聞く機会もありましたが、私は舞台にカムバックされた後の、人生経験を経たお声の方がもっと好きです。
ステージでは、殆どスペイン語で歌われるため、私が歌詞をご紹介していました。
翻訳された日本語の詩を読むより、嵐子さんから直接、詩の意味を伺うのは素敵な仕事でした。

「あのね、修道院の入り口に一台のバンドネオンがころがっていたの。蛇腹はボロボロで穴だらけだし、鍵盤は抜け落ちてるし、塗りは剥げ落ちてるし。まるで捨て子みたいに、置き去りになっていた。
俺もこいつと同じように、人生から捨てられたんだ。そう思ったらたまらなくなってねぇ、そおっと、そう、こうやって、赤ん坊を抱きかかえるように、大切に自分の部屋に持ち帰ったの。社会から捨てられた、まるで自分自身のような気がしたねのね。
そして、凍えた胸で赤ん坊をあやすように そっと弾いてみた。俺もまた恋人に捨てられて、歌えなくなって、貧しい部屋にひとりぼっち。そんな俺を慰めようと、お前も声を出そうとするが、聞こえてきたのは、穴の空いた蛇腹からヒューヒューと哀しげに、ただ空気が漏れる音だけ。しわがれた痛ましい音だけだったの。」

そんな風な感じで、身振り手振りを加えながら、バンドネオン•アラバレロ(場末のバンドネオン)
の歌詞を語ってくださいました。

嵐子さんの歌詞の説明は、情景が目の前に見えてきて、ある時は酒場のカウンターに腰掛けてベロンベロンに酔っ払った男になり、また、どんどん身を持ち崩して行く女になり…。
嵐子さんの話をそのまま舞台でお客様にお聞かせしたかったほどです。
まさに、ドラマの一コマでした。
歌の前の歌詞紹介…それは、私が舞台に登場して、私の言葉で歌詞を説明する時もあれば、ギターの前奏をバックに詩を朗読する声だけ流れ、そのまま歌に入って行く時もありました。
詩の朗読の場合、アナウンサーのように平板に読んでも、また勝手に感情をいれすぎても、その後の歌のイメージを壊してしまいます。
あの、嵐子さんが説明してくださった口調が、私の頭からは 離れませんでした。そこで、もしも嵐子さんだったらどう話すかしら?そう思いながら、嵐子さんの口調を真似るのではなく、嵐子さん自身の代わりに私が語ろう…そう思って、朗読したり語ったりすることにしました。
いつかまた、あの時のようにタンゴの登場人物になって、その世界を語って見たいと思う時があります。もっともっと貪欲に、あれもこれもとおねだりして、嵐子さんに沢山の歌詞を語っていただけば良かった。…そう思っても時すでに遅く…もう教えていただくことができなくなってしまったのが、何とも心残りです。
    歌詞のこと

初めて藤沢嵐子さんの司会をしたのは、嵐子さんかタンゴ界から10年ほど退いていらして、その後に活動を再開された頃でした。ですから、私は若い頃の嵐子さんを存じ上げていません。
昔は美しい高音だったと伺っていますが、初めて聴いた嵐子さんの歌は、伸びやかな中低音の深みのあるお声でした。若い頃の歌声を録音したものを聞く機会もありましたが、私は舞台にカムバックされた後の、人生経験を経たお声の方がもっと好きです。
ステージでは、殆どスペイン語で歌われるため、私が歌詞をご紹介していました。
翻訳された日本語の詩を読むより、嵐子さんから直接、詩の意味を伺うのは素敵な仕事でした。

「あのね、修道院の入り口に一台のバンドネオンがころがっていたの。蛇腹はボロボロで穴だらけだし、鍵盤は抜け落ちてるし、塗りは剥げ落ちてるし。まるで捨て子みたいに、置き去りになっていた。
俺もこいつと同じように、人生から捨てられたんだ。そう思ったらたまらなくなってねぇ、そおっと、そう、こうやって、赤ん坊を抱きかかえるように、大切に自分の部屋に持ち帰ったの。社会から捨てられた、まるで自分自身のような気がしたねのね。
そして、凍えた胸で赤ん坊をあやすように そっと弾いてみた。俺もまた恋人に捨てられて、歌えなくなって、貧しい部屋にひとりぼっち。そんな俺を慰めようと、お前も声を出そうとするが、聞こえてきたのは、穴の空いた蛇腹からヒューヒューと哀しげに、ただ空気が漏れる音だけ。しわがれた痛ましい音だけだったの。」

そんな風な感じで、身振り手振りを加えながら、バンドネオン•アラバレロ(場末のバンドネオン)
の歌詞を語ってくださいました。

嵐子さんの歌詞の説明は、情景が目の前に見えてきて、ある時は酒場のカウンターに腰掛けてベロンベロンに酔っ払った男になり、また、どんどん身を持ち崩して行く女になり…。
嵐子さんの話をそのまま舞台でお客様にお聞かせしたかったほどです。
まさに、ドラマの一コマでした。
歌の前の歌詞紹介…それは、私が舞台に登場して、私の言葉で歌詞を説明する時もあれば、ギターの前奏をバックに詩を朗読する声だけ流れ、そのまま歌に入って行く時もありました。
詩の朗読の場合、アナウンサーのように平板に読んでも、また勝手に感情をいれすぎても、その後の歌のイメージを壊してしまいます。
あの、嵐子さんが説明してくださった口調が、私の頭からは 離れませんでした。そこで、もしも嵐子さんだったらどう話すかしら?そう思いながら、嵐子さんの口調を真似るのではなく、嵐子さん自身の代わりに私が語ろう…そう思って、朗読したり語ったりすることにしました。
いつかまた、あの時のようにタンゴの登場人物になって、その世界を語って見たいと思う時があります。もっともっと貪欲に、あれもこれもとおねだりして、嵐子さんに沢山の歌詞を語っていただけば良かった。…そう思っても時すでに遅く…もう教えていただくことができなくなってしまったのが、何とも心残りです。
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プロフィール

はんがん

Author:はんがん
河崎早春(かわさき さはる)
俳優、朗読家。NPO日本朗読文化協会講師。

舞台の案内、これまでの舞台、仕事歴は
公式HP 「ことばの国」

朗読、語りの様子はYouTube
「ちりぢごく」「瘤取り」ほか


プライベートな 趣味の世界は Facebook

なお、武者小路実篤記念館のHPで
詩の朗読の映像も見られます。
→ 「詩の世界」

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