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芝居で出合った 演出家、俳優の 現場のイイ話。私の本箱、イメージを言葉にする とっておきの方法 。 エッセイ、イラスト、本のコレクションの紹介、その他 私のお気に入り あれこれ 

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見た聞いた!

小津安二郎と樋口一葉(下)

子供の社会と大人の社会

「生まれてはみたけれど」の映画を見終わった後
不意に「たけくらべ」の子供たちのことが頭に浮かびました。

1932年(昭和7年)の新興住宅地の子供たちと
明治の中期の吉原界隈の子供たち
おなじ子供たちと言っても、後者の方が年上ですが
たけくらべ」の子供たちの世界には
大人の社会が入り込んでいます。
妙にませていて、いっぱしの大人のような口をききながら
それでも完全に大人社会に足を踏み入れているわけではありません。
でも、この子はこういう人生を送るのだろうなあと
読者の誰もが想像することができます。

小津映画の子供たちは
サラリーマン家庭ですから
親の働いているところを見て育ってはいません。
子供の社会に大人の社会は入り込まず
主人公の兄弟は
会社の上司の子を子分にしています。
子供には子供の つきあいがあります。

だから上司にへつらう父親の生き方は
子供の価値観では納得がいかず、怒りは爆発。
でも、最後に上司にぺこぺこする父親の生き方を
生活のためには仕方がないと
子供ながらに受け入れ
それでも 上司の子には頭を下げないぞ
という自分たちの生き方も主張し
とはいうものの、その子を従えつつも
「お前の親父の方が偉いんだな」と歩み寄ったりするところなど
思わずクスッと笑ってしまいます。

この子たちがどういう大人になっていくのか
たけくらべ」とちがって
こちらは未知数です。

江戸から明治に、そして現代になるに従って
大人の働いている姿が 子供から
どんどん隔離されていくようになりました。
大人の社会は子供たちにとって
すぐに納得できるものではなく
矛盾に満ち、そこには様々なしがらみもあります。
そういうものを 子供ながらに感じとり
それを自分なりに どう納得させていくか
そういう 矛盾との戦いも
人間の深みや、豊かさを育てていくような気がします。
矛盾とどう向き合うか
それによって潰されたり、ひらきなおったり
悪い芽が生まれてくる可能性も大きいけれど。

小津映画と一葉の子供たちを比べながら
この矛盾について考えました。
どちらも、大人の社会の矛盾に出合って
それによって子供たちは成長していきます。
もしも、子供時代にこの矛盾に出合わなかったとしたら…。
大人の社会を 見せないようにすること
矛盾を感じさせず
綺麗なものだけを見て育つことに
ちょっと怖さを感じました。
大人になって そこではじめて社会と自分との矛盾を感じたとしたら…。
矛盾を感じずに生きた時
子供の社会をそのまま大人に引きずって
社会の出来事を これは善、これは悪 と
すっぱり割り切って生きていくと
とっても怖い社会になるのではないかと。
自分の考えが社会の常識、世界の常識と思ってしまったら…?

今の世の中を見ていると
人間も、社会も「懐の深さ」というものが
どんどん失われているような気がします。
すぐにキレる人の事件も後を絶ちません。
もしかしたら子供のころの
こんな経験も
少しはそれに関係しているのかもしれませんね。

「じゃあ、お前はどうなんだ」
と言われたら…
大人社会の矛盾を教えてくれたのは
本や映画だったような気がします。
実社会で突きつけられた人に比べたら
ひ弱ですね…きっと…。
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プロフィール

はんがん

Author:はんがん
河崎早春(かわさき さはる)
俳優、朗読家。

舞台の案内、これまでの舞台、仕事歴は
公式HP 「ことばの国」

朗読、語りの様子はYouTube
「ちりぢごく」「瘤取り」ほか

YouTube Facebookにて「本に囲まれて」
本に関する情報を発信中。

プライベートな 趣味の世界は Facebook

なお、武者小路実篤記念館のHPで
詩の朗読の映像も見られます。
→ 「詩の世界」

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