芝居で出合った 演出家、俳優の 現場のイイ話。私の本箱、イメージを言葉にする とっておきの方法 。 エッセイ、イラスト、本のコレクションの紹介、その他 私のお気に入り あれこれ 

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本に囲まれて

心に残る音



舞台音響の草分け、辻亨二さんによる、
芝居の効果音をテーマにしたエッセイ集です。

以前、朗読の公演を企画した時に
どなたかゲストを招いて「音」をテーマにトークショーをやってみようと思いつきました。
そのときにゲストで出演してくださったのがこの辻さんです。
その話芸に聞き惚れました。
打ち合わせで事務所にお邪魔したのはいいけれど、
面白くて面白くて、このまま一日中打ち合わせをしていたいと思ってしまいます。いっぺんにファンになりました。
朗読の合間のおしゃべりだけではもったいない、
トークショーだけでひとつの公演にすれば良かったと後悔した程です。

そんな辻さんの口調がそのままエッセイになっているのがこの本です。
話芸の達者な方は、文章も生き生きしています。
ナマの舞台でアナログの音作り
その悪戦苦闘ぶりが、読んでいると面白いこと!
昭和30年代の舞台の様子が、まるで現場にいるよう。
大矢市次郎、先代の水谷八重子、伊志井寛、川口松太郎、宇野信夫、北條秀司、その他歌舞伎の名優達とのやり取りが、伝わってきます。
舞台でナマの音を作る苦労。
霧の音を作れと言われて苦労した話。

花柳章太郎が「大つごもり」の おみね を演じた時の話。
車井戸から何度も水をくみ上げるシーンがあります。
過酷な労働と薄幸な娘を印象づけるシーン。
身体の大きい男が小娘を演じるためには、
井戸を深くしないと、その感じが出ない。
「キュルキュル」と井戸の車がきしみ
「ドボン」と水面に当たる音。
その間をあけることで、井戸の深さを想像させます。
老優が17才の娘を演じる為に
花柳さんは身体と格闘しながら、この過酷なシーンをこなし、
日に日に、汲み上げ回数を減らさざるをえなくなり、
ついに代役に変わって そのまま亡くなられました。
「キュルキュル」と「ドボン」の間を詰めれば楽だったけれど、
最後までそれに こだわり続けた名優のお話です。

声による犬の喧嘩が、天才的だった加納さんの話。
迫真の喧嘩の凄さをレコードに録音したところ、
加納さんと大げんかをした勢いで、
その場で盤を割ってしまいました。
しかしその後加納さんは、もう闘犬の声が出せなくなり、
録音は幻になってしまった…
土佐犬がスピッツになってしまったという話。
その猛烈な犬の喧嘩の迫力が伝わってきます。


 音響の本は、岩渕東洋男さん、園田芳龍さんなどの名著はありますが、辻さんのこの本は、まさに名随筆。
折に触れて、私も朗読でとりあげて、ご紹介させていただいています。

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プロフィール

はんがん

Author:はんがん
河崎早春(かわさき さはる)
俳優、朗読家。NPO日本朗読文化協会講師。

舞台の案内、これまでの舞台、仕事歴は
公式HP 「ことばの国」

朗読、語りの様子はYouTube
「ちりぢごく」「瘤取り」ほか


プライベートな 趣味の世界は Facebook

なお、武者小路実篤記念館のHPで
詩の朗読の映像も見られます。
→ 「詩の世界」

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