芝居で出合った 演出家、俳優の 現場のイイ話。私の本箱、イメージを言葉にする とっておきの方法 。 エッセイ、イラスト、本のコレクションの紹介、その他 私のお気に入り あれこれ 

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本に囲まれて

内田百閒の絵本「王様の背中」







まず、この本をめくって圧倒されるのが、版画の迫力。
内田百閒による9編の短編童話集です。

最初にページをあけると、序(はじめ)に、
「この本のお話には、教訓はなんにも含まれておりませんから、
皆さんは安心して読んで下さい。」
と、あります。「安心してください」というのがいいですね。
百閒らしさはここからはじまります。わかる、わかる。





総ルビも嬉しい。
赤い文字が版画を引き立てております。




「王様の背中」
痒くて痒くて、ひたすら身体を掻きまくる王様のはなし。
手では届かずに、棒を使ってもだめ、壁を使っても駄目、ジリジリしながら、最後までひたすら大騒ぎして掻いている…それだけのお話。…というところが、なんとも百間らしい。
「王様は膝をついて、背中をうねくね動かしました。」
「うねくね」 って言い方、いいなぁ。




この猫の迫力ある構図!
ちいさな武士はネズミ達です。




「桃太郎」
桃太郎が生まれた後の桃の実は、どうなったかという話。




「狸の勘違ひ」
動物園の檻に入れられた狸が、見物の人間たちを観察し、この人達は自分に化かされて、自らやって来ているのだと思い込んで楽しんでいる話。

とにかく、どの話も、オチちも何もない、さあ、次はどうなるだろうと思って読んでいくが、最後まで何にもない。それなのに、その話そのものが百閒らしくて、ぐいぐい引きずり込まれます。まさに百閒と、安規ワールド炸裂です。

この装丁・挿絵の谷中安規という版画家は
いったい何者なのでしょう。

版画家谷中安規(1897-1946)
独学で版画を学んでいます。
谷中が『王様の背中』の装丁、挿絵を手がけたのは、
詩人佐藤春夫が紹介したからだそうです。
日夏耿之介にも愛されていました。

百閒は
「初めは谷中氏に挿絵を描いて貰ふと云ふつもりであったのが、
出来上がって見ると、谷中安規版画集の趣きがある」
と称賛しています。

安規のことは、TV「美の巨人たち」もとりあげたのですね

貧窮の独身生活を送り、終戦の翌年に50才で栄養失調でなくなった。
内田百閒が彼を敬愛し、「風船画伯」(紐の切れた風船のように突然フラッとどこへ行くかわからない)と名づけ、装丁と挿絵を彼に依頼してつくった絵本が『王様の背中』
安規も百閒に負けず劣らず、奇人です。
「ぼくに就職をすすめることは、間接殺人です」

特装本と普及本が出版され、特装本には手摺版画も入っています。
私のは昭和9年の初版でしたが(1圓20銭)
限定200部という文字はないから普及本かな?
限定版だったら古本サイトで65万円の値がついている ひゃ〜
まあ、65万円なくても…旺文社文庫にもなっていました。
復刻版もあります。

ただ今、町田市立国際版画美術館で安規展が開催されているので
早速みてきました。
ここでご紹介した挿絵は、ほとんど展示されていませんでしたが
ときどき、ドキッとするような作品があって
一風変わった版画展は、なかなか面白かったです。
初期はゴシック•ロマン、エロティックでグロテスクなものからスタート。
戦前のモダン都市東京の光と闇の世界、
どこか土俗的な匂いのする世界と、
この時代の匂いを濃厚に漂わせています。
百閒とはよほど気があったのか
百閒の本の装丁は、どれも伸び伸びと個性的でした。
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プロフィール

はんがん

Author:はんがん
河崎早春(かわさき さはる)
俳優、朗読家。NPO日本朗読文化協会講師。

舞台の案内、これまでの舞台、仕事歴は
公式HP 「ことばの国」

朗読、語りの様子はYouTube
「ちりぢごく」「瘤取り」ほか


プライベートな 趣味の世界は Facebook

なお、武者小路実篤記念館のHPで
詩の朗読の映像も見られます。
→ 「詩の世界」

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