芝居で出合った 演出家、俳優の 現場のイイ話。私の本箱、イメージを言葉にする とっておきの方法 。 エッセイ、イラスト、本のコレクションの紹介、その他 私のお気に入り あれこれ 

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見た聞いた!

春画展みたいよ〜

ピエール•カルダンと昼食した!!ときのはなしです。
もう30年くらい前になりますが
パリに行った時に、
「今からランチをご一緒できるかなあ」
と父が空港から電話して、
友人をランチに誘いました。
「もうひとり連れて行ってもいいならだいじょうぶよ」
といわれて…それが…びっくり。カルダン氏でした。
当時 パリで最も多忙な男 と言われていた
カルダンの時間が たまたま空いたので
「連れて来ちゃったわ」…と。

食事中、彼は好奇心一杯にあれこれ質問を浴びせ
次から次へと目をキラキラさせて喋り…
それは子供の目をした紳士でした。

こうして4人で食事をしたあと
彼の芸術の発表の場として作ったエスパス•カルダン
案内していただきました。
「ここで北斎の春画展をやったのですが、素晴しかったですよ」
それは、地下のスペース。
真っ暗にして、入り口でチケットと一緒に
ペンライトを配ったそうです。
いかにもカルダンらしいユーモアとアイディア!
ひとりひとりが ペンライトの明かりで照らしてみる
大胆であり繊細な技巧の極地である春画
それはどんなに素敵だったでしょう!
こんな風にして見てみたいなあ…。

しかしっ、日本では真っ暗な展覧会は消防法に触れるし
第一、本物の春画を見られるような展覧会自体が
開催されないのです。
大英博物館にはじまって世界各地を巡回する春画展を
日本だけが受け入れないなんて!
一流の画家たちが春画をこぞって描いたというのは
江戸の遊び心。
いかに現代に遊び心が失われているか…。
日本が誇る、素晴しい江戸文化なのにぃ。
なんてこったい!!
だいいち、江戸時代には子供だって見てたし。
お嫁に行く娘に持たせた人もいるくらいだし。
私だって小学生の頃に
父に社会教育の一環として
印刷した春画も見せてもらったし、
昔の吉原遊郭跡だって連れて行かれた経験があるけど。
だからって、性犯罪には関係してないぞ。
まあ、少々エッチな話は好きになったかも知れないけど…。
見せなきゃいいってもんじゃないでしょね〜。

春画記事
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見た聞いた!

小津安二郎と樋口一葉(下)

子供の社会と大人の社会

「生まれてはみたけれど」の映画を見終わった後
不意に「たけくらべ」の子供たちのことが頭に浮かびました。

1932年(昭和7年)の新興住宅地の子供たちと
明治の中期の吉原界隈の子供たち
おなじ子供たちと言っても、後者の方が年上ですが
たけくらべ」の子供たちの世界には
大人の社会が入り込んでいます。
妙にませていて、いっぱしの大人のような口をききながら
それでも完全に大人社会に足を踏み入れているわけではありません。
でも、この子はこういう人生を送るのだろうなあと
読者の誰もが想像することができます。

小津映画の子供たちは
サラリーマン家庭ですから
親の働いているところを見て育ってはいません。
子供の社会に大人の社会は入り込まず
主人公の兄弟は
会社の上司の子を子分にしています。
子供には子供の つきあいがあります。

だから上司にへつらう父親の生き方は
子供の価値観では納得がいかず、怒りは爆発。
でも、最後に上司にぺこぺこする父親の生き方を
生活のためには仕方がないと
子供ながらに受け入れ
それでも 上司の子には頭を下げないぞ
という自分たちの生き方も主張し
とはいうものの、その子を従えつつも
「お前の親父の方が偉いんだな」と歩み寄ったりするところなど
思わずクスッと笑ってしまいます。

この子たちがどういう大人になっていくのか
たけくらべ」とちがって
こちらは未知数です。

江戸から明治に、そして現代になるに従って
大人の働いている姿が 子供から
どんどん隔離されていくようになりました。
大人の社会は子供たちにとって
すぐに納得できるものではなく
矛盾に満ち、そこには様々なしがらみもあります。
そういうものを 子供ながらに感じとり
それを自分なりに どう納得させていくか
そういう 矛盾との戦いも
人間の深みや、豊かさを育てていくような気がします。
矛盾とどう向き合うか
それによって潰されたり、ひらきなおったり
悪い芽が生まれてくる可能性も大きいけれど。

小津映画と一葉の子供たちを比べながら
この矛盾について考えました。
どちらも、大人の社会の矛盾に出合って
それによって子供たちは成長していきます。
もしも、子供時代にこの矛盾に出合わなかったとしたら…。
大人の社会を 見せないようにすること
矛盾を感じさせず
綺麗なものだけを見て育つことに
ちょっと怖さを感じました。
大人になって そこではじめて社会と自分との矛盾を感じたとしたら…。
矛盾を感じずに生きた時
子供の社会をそのまま大人に引きずって
社会の出来事を これは善、これは悪 と
すっぱり割り切って生きていくと
とっても怖い社会になるのではないかと。
自分の考えが社会の常識、世界の常識と思ってしまったら…?

今の世の中を見ていると
人間も、社会も「懐の深さ」というものが
どんどん失われているような気がします。
すぐにキレる人の事件も後を絶ちません。
もしかしたら子供のころの
こんな経験も
少しはそれに関係しているのかもしれませんね。

「じゃあ、お前はどうなんだ」
と言われたら…
大人社会の矛盾を教えてくれたのは
本や映画だったような気がします。
実社会で突きつけられた人に比べたら
ひ弱ですね…きっと…。

見た聞いた!

小津安二郎と樋口一葉(中)

樋口一葉たけくらべ

昔から大好きな作品でした。
ここに描かれているのは
遊郭 吉原界隈という特殊な地域に暮らす
ちょうど子供から大人になっていく
微妙な年代の子供たちです。
そのひとりひとりが
大人の社会を背負っていて
「ああ、この子に こんな面があるんだ…」
と、読み進むうちに気付かされます。
どの子供も、その子を主人公に物語ができる…
それほど、魅力的に生き生きと描かれているのです。

さて、ここで取り上げたいのは
三五郎という戯け者の少年です。

たけくらべ」の子供たちは
鳶の親方の息子、長吉がリーダーの「横町組」と
家が金貸しの。正太郎ひきいる「表町組」と
二つの組に分かれて反目しています。
三五郎は貧しい俥引きの息子。
「横町組」に住まいはあり、
横町組の長吉の親が長屋の大家。
そのうえ表町組の正太郎の家からは借金がある。
そんな複雑な家庭の事情があり
横町、表町、どちらにも いい顔をするしかありません。
そのどっちつかずの態度を 
皆に責められ、馬鹿にされます。
三五郎の下には五人の兄弟があり
兄貴として兄弟の暮らしを支えてもいます。
赤ん坊を負ぶいながら 
声のかかるところならどこでも
便利屋のように、ほいほいと働き
三枚目のお調子者として、皆から好かれ、重宝がられている。
戯けて生きる逞しさを彼は持っています。

たけくらべ」の子供たちの中では
美登利、信如、正太郎に比べて脇役ではありますが
三五郎の描写になると、一葉さんの筆が生き生きとしてきます。
きっと一葉のまわりにも
「頑張れよ」と声をかけたくなるような
こんな子供がいたにちがいありません。
三五郎

見た聞いた!

小津安二郎と樋口一葉(上)

小津安二郎
「大人の見る絵本 「生まれてはみたけれど


最近朗読の舞台で「たけくらべ」を取り上げたのですが
たまたまTVで小津安二郎の無声映画
生まれてはみたけれど」を見て、
たけくらべ」と比較しながら、感じることがありました。
どちらも子供の社会と大人の社会が描かれています。

そこでまず小津映画の方から…
 
以前このBlogで「お早う」を取り上げましたが
《「お早う」はフランス映画の匂い(1)(2)》
生まれてはみたけれど」(1932年)も
二人の兄弟が主人公です。
「大人の見る絵本 生まれてはみたけれど
タイトルに「大人の見る絵本」とあるように、
たけくらべ」もそうですが、大人の目で子供たちの様子を描写しています。
 
郊外の新興住宅地に越して来たサラリーマン一家。
二人の子供は近所の悪ガキたちに虐められますが
そのうち、友達になり、一緒に遊ぶようになります。
兄弟の尊敬するのは威厳のある父親。
ところが、ある時、その父親が上司の前で
卑屈なまでにへりくだって
三枚目を演じていることを知ってしまったのです。
父親に対する怒りがこみあげる兄弟。
そんな子供の反抗を知った父母は戸惑います。
やがて、子供達は父親の立場を知り
大人への第一歩を踏み出すのです。

この、子供たちひとりひとりが
生き生きとして、逞しく、なんともユーモラス!
子供達の父親自慢のシーンは印象的でした。
「俺の親父は、歯(入れ歯)を入れたりとったりできるぞ」
と自慢するかと思えば
「うちの父ちゃんは綺麗な車に乗ってる」
「何だい、お前ンちはお葬い屋じゃないか」
子供ならではの理想と
大人の現実とのギャップに
思わず笑ってしまいながら、
両親の愛情や
子供ならではの やるせなさに
ホロリと涙する、
すてきな映画でした。



プロフィール

はんがん

Author:はんがん
河崎早春(かわさき さはる)
俳優、朗読家。NPO日本朗読文化協会講師。

舞台の案内、これまでの舞台、仕事歴は
公式HP 「ことばの国」

朗読、語りの様子はYouTube
「ちりぢごく」「瘤取り」ほか


プライベートな 趣味の世界は Facebook

なお、武者小路実篤記念館のHPで
詩の朗読の映像も見られます。
→ 「詩の世界」

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